サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
離婚 | 不成立 | 成立 | |
養育費 | 400万円 | 500万円 | 100万円増額 |
財産分与 | 妻から夫へ1700万円支払う | 妻から夫へ1200万円支払う | 500万円減額 |
Mさんは、14年に夫と結婚しました。
夫とは日常的に意見が対立して喧嘩になることが多い状況でしたが、夫が単身赴任をすることが多く、お子さんもいたのでなんとか婚姻関係が継続されていました。
しかし、いよいよお互いの考え方について折り合いがつかなかったために、離婚することを決意しました。
夫も、離婚することについては同意していました。
他方で、お子さんが高校受験を控えており、できるだけ環境を変えないようにするには、今住んでいる夫名義の不動産を取得し、このまま住み続けることにしたいとMさんは考えていました。
ただ、そうなると財産分与としてはMさんがもらいすぎとなるため、その分を夫に支払って清算をしなければなりません。
そして、夫はこの清算金を高く主張してきました。
さらに、これからより一層かかってくる教育費をまかなうため、養育費も考えなければなりませんが、夫の提示している金額が妥当なのか判断しかねていました。
そして、普段から高圧的だと感じる夫の態度は、Mさんにとって非常にストレスでした。
そこで、Mさんは、当事務所の離婚弁護士に相談しました。
弁護士は、Mさんの代理人として、夫に文書を送付し、財産資料と収入資料を開示するよう通知しました。
夫は、素直に資料の開示をしてきました。
しかし、不動産の評価額については自身の主張を頑なに曲げませんでした。
また、養育費についても、支払は18歳までしか払わないという意向で、離婚が成立するまでの生活費(婚姻費用)もなかなか支払ってくれませんでした。
当事務所の弁護士は、清算金額について何通りか検討し、夫と交渉を重ねましたが、弁護士を立てずに自身で交渉してくる夫は感情的な部分があったため、結果的に任意での合意に至ることはできませんでした。
そこで、Mさんは、離婚と婚姻費用を求めて調停を申し立てました。
調停で夫は、これまで争っていなかった親権について争う姿勢を示してきたため、調停での協議は暗礁に乗り上げたかに見えました。
しかし、お子さんが中学生で自分の意思があること、夫の本心としては、子どもは母親であるMさんと一緒がいいだろうと考えていたため、調停外の協議でこの争いを収めることができました。
また、婚姻費用と養育費については、調停のなかで法的主張を整理し、裁判所の見解が述べられた結果、婚姻費用の未払金の額、養育費の額、養育費の終期を18歳ではなく20歳までとすることについて、夫の了承を得ることができました。
他方で、不動産の評価額についての対立は続き、協議は難航しました。
そこで、Mさんは、夫への清算金額を一括で支払う手はずを整えることにしました。
幸い、ご親族の援助を受けることができたので、一括払いの準備をすることができました。
その結果、夫はこちらの提案額を受け入れ、Mさんは希望額で不動産を取得することができました。
また、不動産を取得した結果もらいすぎる分の清算金から、将来の養育費の総額を控除した結果、実質的に20歳までの養育費を全額回収することができました。
こうしてMさんは、すべての条件について合意に至り、離婚することができました。
本件のメインの争点について解説します。
養育費は、簡単にいうと子の生活費を夫婦でどのように分担するかを決めたものです。
これをいつまで支払うかという問題が、いわゆる「終期」の問題として議論されます。
民法改正に伴い、2022年(令和4年)4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
しかし、養育費の終期が当然に18歳に達するまでとは考えられていません。
これは、養育費は、子が未成熟であって経済的に自立することを期待できない場合に支払われるものと考えられているからです。
言い換えると、大学等高等教育機関に進学する、あるいは進学しなくとも就職できていないなど、成人に達したとしても、経済的に自立できていない状況が多く生じるためです。
以上の見解は、2018年(平成30年)10月4日にすでに法務省の見解として公表されています。
引用元:成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について|法務省
相手方が養育費を今後も支払い続けるかどうかわからない不安から、一括払いを希望される方も少なくありません。
しかし、多くの場合一括払いできるほどの現金がないことから、実現が困難なケースがほとんどです。
もっとも、本件のように相殺処理することにより、実質的に将来的な養育費をすべて支払済とする方法を取れば、一括払いをしてもらったのと同じ結果をもたらすことができます。
養育費の一括払いについて、くわしくはこちらもご覧ください。
財産分与とは、婚姻してから別居するまでの同居期間中に、夫婦で築いた財産を折半する制度です。
不動産を分与するにあたり、住宅ローンが残っている場合、その評価については、時価から残ローンを控除して算出します。
住宅ローンがある家を財産分与について、詳しくはこちらをご覧ください。
本件のように、夫名義の不動産に妻と子が居住しているケースは多くあります。
もっとも、妻の方が夫より収入が低いこともまた多く、その妻側が不動産を取得できるケースは少ないことが多いです。
相手方配偶者名義の不動産の取得を考える場合、自身に資力があるか(収入面、預金面)、あるいはご親族など他の方からの援助が見込めるかを検討する必要があります。
本事案では多数の財産が挙げられ、その取得経過を遡ったり、それを確認するための古い資料が提出されるなどしたため、非常に複雑な議論となりました。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。