サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
離婚 | 不成立 | 成立 | |
養育費 | – | 一人あたり10万円 + 私学加算金
私立の子一人当たり月額約4万円の加算 |
月額約10万円増額 |
財産分与 | 0円 | 6000万円支払う | 6000万円増額 |
Sさんは、30年前に夫と結婚しました。
夫は、先代から続く会社を継いだ3代目の経営者でした。日頃から他の人を下に見るような態度を日常的に行い、Sさんも非常に辛い家庭生活を余儀なくされていました。
もちろん、夫が家事、育児に参加することなどほとんどなく、Sさんの負担は年々増すばかりでした。
ときには自分の意見を主張することがSさんにもありましたが、結婚当初に手を挙げられたことが1度あり、夫のことが怖くそれ以上は言えないことも何度もありました。
Sさんは、夫のこのような性格に限界を感じ、夫と決別することを心に決め、別居生活を開始しました。
その後、夫は離婚に応じることを頑なに拒み、執拗に修復を求めてきました。
一方のSさんは、夫が端末を使用して自身の位置情報を把握しているのではないかと心配になり、どうにかしてこの監視状態から抜け出せないかと考えました。
そこで、Sさんは、当事務所の離婚弁護士に相談しました。
弁護士は、Sさんの代理人として、夫に協議離婚の申入書を送付し、離婚の協議をしたいことを通知しました。
また、早急にこれまでどおりの生活費を支払うこと、財産分与に必要な資料の開示を求めました。
これに対して、夫は当初代理人を立てずに回答してきました。
回答書には、離婚には応じられないこと、また、生活費については、日々の支出の内訳の説明と領収書の提示を求める旨が記載されていました。
当事務所の弁護士は、なんとか協議で解決できないか、相手方の弁護士と交渉しましたが、夫は頑なに離婚を拒みました。
そのさなか、たまたまSさんに協力してくれていたSさんの友人(男性)との間に不貞関係があると夫は主張してきました。
その結果、夫の態度はますます頑ななものとなっていきました。
それと同時に、夫は、この男性を相手に慰謝料請求の訴訟を提起してきました。
Sさんは、並行して婚姻費用を求める調停と離婚調停を申し立てました。婚姻費用は調停が成立し合意となりましたが、離婚調停については不成立にて終了しました。
一方でSさんは、この男性と不貞関係はないことを主張しましたが、残念ながら男性に対して提起された訴訟の判決では不貞であると評価されることとなってしまいまた。
そのため、改めて協議を続行しましたが、結局夫が離婚に同意することはありませんでした。
そこで、Sさんは有責配偶者と評価されることを覚悟で、離婚訴訟を提起しました。
夫側は、一貫して離婚を拒んでいましたが、訴訟の途中で実はSさん以外の女性と交際関係にあった事実が判明することとなりました。
その事実を突きつけた結果、頑なだった夫の態度は一変し、離婚を前提とした議論が進んでいきました。
もっとも議論になったのは、財産分与でした。
夫は、財産のすべてが先代からの相続財産によって形成されたとして、分与すべき財産はないと主張してきました。
これに対しては、財産をひとつひとつ挙げていき、共有となるべきものとそうでないものを区別し明確にして反論をしていきました。
財産の種類も数も多岐に渡りましたが、裁判所も積極的に和解に対する働きかけを行った結果、財産分与として6000万円を夫が支払う内容で合意することができました。
次に養育費ですが、私立に通う子がおり、15歳を超えたことも考慮して、結果的には、従前の婚姻費用より高額な養育費を払ってもらう形で合意することができました。
本件のメインの争点について解説します。
裁判所が離婚を認めるのは5つの場合に限定されています。
すなわち、
の5つです。
ただし、婚姻関係を破綻させる行為を行ってしまった側の配偶者(これを「有責配偶者」といいます。)から離婚を求めても、裁判所は離婚を認めてはくれません。
本事案では、夫側にも有責な事情が明らかになったことから、幸いにも離婚協議が進展することとなりました。
養育費は、簡単にいうと子の生活費を夫婦でどのように分担するかを決めたものです。
基本の金額はいわゆる算定表によって定められますが、私立校に通うなど、算定表で評価されていない支出がある場合はこれを考慮する必要があります。これを私学加算といいます。
たとえば、中学生までであれば、年間の学費等が約13万円を超える場合、高校生以上であれ、年間の学費が約26万円を超える場合は、私学加算の主張を検討することになります。
有責配偶者であっても、離婚になる場合は財産分与をすることになります。
本事案では、夫の財産が共有財産なのか、特有財産(財産分与の対象とはならない、その人固有の財産)なのかが大きく争われました。
財産分与とは、婚姻してから別居するまでの同居期間中に、夫婦で築いた財産を折半する制度です。
言い換えると、夫婦で築いたわけではない財産、たとえば相続財産などは、財産分与の対象とはなりません(相続財産は、亡くなった方(被相続人)が築いた財産です。)。
本事案では多数の財産が挙げられ、その取得経過を遡ったり、それを確認するための古い資料が提出されるなどしたため、非常に複雑な議論となりました。
離婚が認められる場合について、くわしくはこちらをご覧ください。
養育費・婚姻費用の私学加算について、くわしくはこちらをご覧ください。
財産分与について、くわしくはこちらをご覧ください。
財産分与に関し、特有財産について、くわしくはこちらをご覧ください。
有責配偶者が相手の財産分与について、くわしくはこちらをご覧ください。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。