サポート無 | サポート有 | 利益 | |
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離婚 | 離婚しない | 離婚する | ◯ |
養育費 | ー | 月額10万5000円 | |
財産分与 | 400万円 | 280万円 | 120万円 |
年金分割 | 50% | 50% | |
婚姻費用 | 月額21万円(別居時から請求) | 月額19万円(調停申立時から支払い) | 減額 |
Bさんは、7年前に妻と結婚しました。
Bさんは、結婚から3年後に、長男に恵まれました。
しかし、長男が出生後、妻は、Bさんに対し、長男に会いに来ないでほしいなどと伝え、長男をBさんに近づけようとはしなくなりました。
Bさんは、妻の態度も一時的なものであると思い、長男になかなか会えないことも我慢していましたが、令和2年になり、妻は実家に帰ったことで、以降別居状態が続きました。
別居後も、Bさんは、妻に対し夫婦関係について話し合うよう何度も働きかけを行いましたが、妻が話し合いに応じることはありませんでした。
別居中の婚姻費用(生活費)については、妻に対しBさんの家族カードの利用を許していた他、月額3万円を送金し続けていました。
Bさんは、別居から2年が経過した時点で、妻と離婚するため、当事務所の離婚弁護士に相談しました。
弁護士は、Bさんと離婚までの協議の方針について綿密に打合せをしました。
Bさんが別居後に送金していた婚姻費用(生活費)は、裁判所が示している婚姻費用の適正額と比較すると、低額な状況でした。
また、妻は専業主婦である一方、Bさんは会社員として勤務しており、自宅マンションを始めとした財産を多く持っている状況であり、一定の財産分与は避けられない状況でした。
さらに、別居から数年が経過していましたが、弁護士に相談に来た時点において、妻が離婚に応じてくれるか不透明な状況でした。
そこで、弁護士は、Bさんと協議し、婚姻費用については、裁判所で適正とされる金額を支払う義務が発生する可能性があることを考慮した上で、支出する財産を最小限に留める形で、離婚交渉を進めていくことになりました。
弁護士は、妻に対し、早期離婚を求める通知書を送付しました。
これに対し、妻は、自ら、婚姻費用分担調停を申し立ててきました。
妻は、別居した令和2年からの婚姻費用未払金の請求をしてきました。
その後、妻側も弁護士に依頼しました。
婚姻費用分担調停が申し立てられたことを受け、裁判所で離婚について解決するために、Bさん側から離婚調停の申立てを行いました。
婚姻費用分担調停では、弁護士は、婚姻費用分担義務の始期は、請求時点すなわち婚姻費用調停の申立月とすべきであること、妻も一定の収入を稼ぐ能力(法的には、「潜在的稼働能力」といいます。)があり、婚姻費用もその分減額されるべきであることを主張しました。
最終的に、Bさん側の主張を汲む形で、婚姻費用の月額を19万円とし、婚姻費用分担義務の始期を婚姻費用調停の申立月とする形で調停が成立しました。
婚姻費用については、比較的早期に解決しましたが、離婚についての話し合いは難航しました。
主に争いとなったのは、自宅マンションの評価額、解約返戻金が発生する保険契約の評価方法などでした。
自宅マンションの評価方法については、双方が自宅マンションの査定を出し合う形となりました。
弁護士は、Bさんと協議して、早期解決を図るために双方の出した査定額の中間の値を評価額とする形で協議を進めていきました。
調停委員も、査定額の中間の値を評価額とすることに理解を示してくれていたため、調停員を交えて、妻側を説得して貰う形で進めました。
また、解約返戻金が発生する保険契約の評価方法についても、同居期間中に応じた金額のみが財産分与の対象であることを主張しました。
最終的には、財産分与の金額を280万円として調停が成立し、Bさんは離婚することができました。
本件のメインの争点について解説します。
仮に、離婚調停が不成立になると、離婚をするためには離婚訴訟を提起する必要があります。
離婚訴訟は、最低でも半年はかかることが多く、その間もBさんは婚姻費用を払い続けなければならない状況でした。
別居期間は、3年ほど経過していたため、離婚訴訟でも離婚が認められる事案ではありましたが、離婚成立まで婚姻費用を支払わなければならないことも考えると、多少の譲歩をしたとしても、調停で離婚を成立させることにメリットが大きい事案でした。
そのため、Bさんと弁護士は、離婚訴訟に至った場合の費用や出費を検討した上、自宅マンションの査定額について、双方の査定額の中間値とするなど一定の譲歩をしても、調停を成立させる方向に進めていきました。
離婚手続きの流れについて、くわしくはこちらをご覧ください。
婚姻費用の支払義務の始期は、権利者が婚姻費用を請求する意思を明示した時からであると考えるのが通説です。
権利者が婚姻費用を請求する意思を明示した時とは、婚姻費用の調停を申し立てた時や、弁護士が婚姻費用の請求をした時とされることが一般的です。
今回は、婚姻費用の支払義務の始期については、通説に従って調停が成立しました。
しかし、調停は当事者間での合意により成立するものですので、相手方が通説的見解とは異なる主張をしてきている場合には、きちんと通説的見解を主張することが重要であるといえます。
婚姻費用について、くわしくはこちらをご覧ください。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。