サポート無 | サポート有 | 利益 | |
---|---|---|---|
親権 | 妻 | 夫 | ◯ |
養育費 | 夫が払う | 月額2万円獲得 | 月額2万円 |
財産分与 | ー | 共有持分の取得(ローン負担あり) | ◯ |
年金分割 | 50% | 50% |
Aさんは、11年前に妻と結婚しました。
結婚して数年後に長女が生まれ、長女が出生後も夫婦関係は良好でしたが、長女が4歳になった頃から、妻の長女に対するしつけの厳しさが目立つようになりました。
妻は、長女に言うことを聞かせようと怒鳴りつけ、それに対し、長女も言い返すという出来事が多くなっていきました。
妻のしつけが、長女の負担になっていると感じたAさんは、それまでも家事・育児を夫婦が半々でしていましたが、育児に積極的に関与することで、長女の負担を減らそうと努力しました。
元々、妻の方が料理が得意でなかったため、Aさんが食事の準備を分担していましたが、この頃から、長女の育児の分担もAさんが多く担うようになっていきました。
長女が5歳になった頃から、妻は、長女やAさんと生活リズムをずらすようになり、育児に関与することがますます少なくなりました。
Aさんは、妻に対し、家事・育児に協力するようお願いしましたが、妻の協力は得られないままでした。
Aさんは、妻との離婚を決意し、妻と双方の両親を交えた家族会議を行いました。
家族会議では、長女の親権をどちらが取得するかが争いとなりました。
Aさんは、長女の親権を強く希望しましたが、妻は、妻が親権を取得し、3年後にもう一度親権について話し合えばいいと主張してきました。
また、離婚が成立するまでは、長女を2週間おきに、Aさんと妻が交互に面倒をみようという話が出ました。
家族会議では結論が出ませんでしたが、突然、Aさんの元に、妻の代理人弁護士から受任通知が届きました。
そこで、Aさんは、当事務所の離婚弁護士に相談しました。
弁護士は、Aさんの代理人として、Aさんが長女の親権を取得することを最優先の目標として交渉を開始しました。
代理交渉では、長女の親権の他、夫婦がペアローン(連帯債務といって、夫婦が協力してローン全額を支払わなければならない契約)を組んでいる自宅マンションの財産分与の問題や、婚姻費用の支払いの問題もありました。
まず、自宅マンションについては、妻にも住宅ローンを支払う義務があることを伝え、自宅マンションを誰が取得するか決まるまでは、住宅ローンの半額を支払うよう伝えました。
また、婚姻費用については、先の家族会議において、長女の面倒を2週間おきにみるという話し合いが出ていたため、長女の監護にかかる費用も考慮すると、Aさんが妻に対し、婚姻費用を支払う必要がないという交渉をしました。
一番の争点である長女の親権については、Aさん側で、長女の面倒をみているという状況(監護の実績)を継続することが重要でした。
そのため、長女の面倒を2週間おきにみる現状はできる限り維持した上で、親権をAさんに定めて離婚することを提案しました。
しかし、妻側の代理人も、親権については譲ることは難しいという回答でした。
長女の監護を交互にするという状況が、長女の負担になっていることは、Aさんも弁護士も把握していました。
そのため、弁護士は、Aさんに対し、できる限り長女の負担にならないような形での監護体制を構築するとともに、後々裁判所の手続きになることは予想できていたため、Aさんから長女に対し、不必要な働きかけはしないよう伝えました。
長女の監護を交互にする状況が2か月ほど続いたとき、長女から、妻の方へは行きたくないという話がありました。
弁護士とAさんは、長女の意向や、交互に監護する状況も限界に来ていると考え、通知のタイミングなどを詳細に調整しながら、交互に監護する状況を解消し、Aさんの元で長女の監護をすることを通知しました。
妻側の弁護士からは、予想通り強い反発があり、監護者指定審判と離婚調停の申立てがありました。
監護者指定審判では、同居中の長女の監護の状況や、別居後の長女の監護状況が争点となりましたが、弁護士は、Aさんの監護状況が万全であることを丁寧に主張しました。
交互に監護していた状況を解消したことも争点となりましたが、弁護士は、交互に監護していた状況が、長女の負担になっていたことを詳細に主張しました。
監護者指定審判は、裁判官の判断で審判(裁判官の判断で決着を付ける方法)ではなく調停(裁判所での話し合い)に移されましたが、その背景には、Aさんが親権を取得できるよう、できる限り環境を整えたり、交互に監護する状況を解消するタイミングを調整したことも大きかったといえるでしょう。
本件は、調停での話し合いが行われることになりました。
調停では、調査官調査(裁判所の子の専門家による調査)も行われましたが、ここでも弁護士のサポートの元で、Aさんの監護状況に問題がないことを詳細に主張しました。
最終的には、妻側も親権の取得を諦めることになり、
という条件で調停が成立しました。
本件のメインの争点について解説します。
仮に、妻が長女を連れて別居をした場合、夫であるAさんが親権を取得するのはかなり難しいと思われる事案でした。
裁判所も、未成年者の年齢や意向にもよりますが、別居時点での監護状況を維持する判断をする傾向があります。
本件は、当事者間で、交互に監護をする状況が存在していたため、Aさんが長女の監護を行う状況をできる限り維持する方向で代理交渉を進めていきました。
本件では、長女の負担やAさんの監護体制の構築などの諸事情を考慮して、長女の監護をAさんが開始する状況が違法な監護の開始と評価されないよう細心の注意を払いました。
結果として、Aさんの監護状況を維持する形で調停が成立しました。
親権の争いについて、くわしくはこちらをご覧ください。
離婚問題については、当事務所の離婚弁護士まで、お気軽にご相談ください。