熟慮期間が残り2週間に迫った中で相続放棄が受理された事例

執筆者
相談者Jさん(被相続人の子)
40代
被相続人
相談者の父
相続放棄
の解決事例
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

サポート前の状況 サポート後の状況 利益
被相続人の死亡 約11年前 相続放棄の申述が受理
債権者からの通知 今年2月
弁護士へご相談 今年4月末
熟慮期間の制限 今年5月末 期限内の申立
被相続人の所在 長年疎遠で不明 調査により判明

状況

相談者Jさんは、幼少の頃に両親が離婚をし、母親に引き取られて生活をしていました。

両親の離婚後は、父親とは一切交流がなく、連絡先も全く知らず、どこで何をしているのか、ということも全く不明でした。

父親と一切交流のないまま、Jさんは成人し、結婚もして家庭を築いていました。

すると、突然、今年2月頃に父親の債権者であった金融機関より、父親が亡くなったことと、負債が数千万円あるという通知が届きました。

Jさんは、すぐに弁護士に相談に行けばよかったのですが、立て込んでいた用事もあり、なかなか法律相談にも行けませんでした。

そうしているうちに、4月の末にまでなってしまい、自分ではどうすることもできなくなってしまったため、慌ててJさんは当事務所の相続弁護士に相談をしました。

 

 

弁護士の関わり

弁護士は、まずは、Jさんの状況を確認することにしました。

聞き取りをしたところ、以下の事情がわかりました。

  • 父親とは、母親が離婚をしてからは疎遠となっていること
  • 債権者から通知が来たのは令和5年2月であること
  • 債権者へはまだ連絡をしていないこと
  • 父親の生前の住まいは不明であること
  • 相談者の本籍地が他県の離島にあること
  • Aさんほか、戸籍等の書類は何も手元にないこと

相続放棄の申述の熟慮期間である3ヶ月が、残り2週間と迫っているということもあったため、当事務所の弁護士は、急いで申立の準備に取り掛かりました。

まずは、弁護士から債権者へ、相続放棄の準備をしているため、相談者への督促やその先の手続きに進むことを一旦待ってもらうことの通知を送りました。

そして、相続放棄の申立に必要となる関係書類を集める作業に取り掛かりました。

ところが、そこで大きな問題に直面しました。

相続放棄申立の熟慮期間が残り2週間と迫っているのに、まだ関係者の戸籍がほとんど集まっていない状態でした。

そのため、担当弁護士は、申立に必要になる戸籍等関係書類が期間内にどのようにして集めていくか、ということを考えていきました。

長年疎遠となっている父親の本籍地がどこなのか、亡くなった際の住所がどこであったのか、という情報をいち早く知る必要がありました。

そこで、担当弁護士は、債権者に連絡をして、父親の本籍地や住所等をご存知かどうか確認することにしました。

そうしたところ、父親の本籍地や住所を確認ができたため、それを元に戸籍や住民票を請求することにしました。

これにより父親の戸籍は取得ができましたが、相続放棄の申述の申立に必要になる父親の住民票や戸籍の附票は、保管期間の経過により既に破棄されているということでした。

住民票や戸籍の附票が取得できないと、父親の最後の住所地がわからず、どこの家庭裁判所に申立てるのかが決まらないことになってしまいます。

そのため、再度、債権者に掛け合ってみたところ、債権者より父親が亡くなった当時の住民票のコピーをいただくことができました。

そこで、それを用いて、熟慮期間内に家庭裁判所へ相続放棄の申立を行い、無事相続放棄が認められました。

 

 

補足

熟慮期間

相続放棄をするにあたっては、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に」相続放棄を家庭裁判所に申立をしなければなりません。

本事案のように、債権者からの通知で父親が亡くなったことを知り、負債があることを知った場合には、その通知が来た時から3ヶ月が熟慮期間となります。

熟慮期間を経過した後に申立をしても、裁判所は相続放棄の申述を受理せず、相続放棄ができないことになってしまいます。

債権者から通知が届いたにも関わらずそのまま放置をしていると、3ヶ月という期間はあっという間に過ぎてしまいます。

相続放棄の熟慮期間について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

申述の必要書類

また、家庭裁判所に相続放棄の申述を申立てる場合には、様々な書類が必要になります。

その中でも、戸籍を集める作業は、戸籍がどのようにして作られるのか、また、古い戸籍を読み解く必要もあり、専門的な知識が必要になる場合もあります。

そして、亡くなられた方が複数の結婚・離婚をされている場合や養子縁組をしている場合には、より戸籍が複雑になります。

また、戸籍は本籍地の所在の役所に申請をして発行してもらうため、本籍地が遠方の場合には、直接本籍地の役所に赴くか、コンビニ交付の場合にも事前の申請、郵送で申請をするということになり、戸籍が手元に届くまでに、数日から数週間かかる場合もあります。

とくに期限が迫っているという場合には、どのように集めれば効率よくできるかということも大切になります。

そして、必要書類が申立までに収集できない場合や、既に破棄されている場合など、不測の事態が出てくるということもしばしばあります。

そのような場合には、どのように進めていけばいいのかということも事案によって変わってくるため、相続手続に精通した弁護士によるサポートが必要不可欠になります。

また、不測の事態に備えて、早め早めに弁護士に相談に行くことで、安心して相続放棄をすることができます。

相続放棄の必要書類等について、詳しくはこちらをご覧ください。

相続問題については、当事務所の相続弁護士まで、お気軽にご相談ください。

 



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