Tさんは、15年前に自宅を2000万円で購入し、毎月着実に返済を続けていました。
しかし、Tさんの仕事は歩合の割合が大きく、毎月の収入に大きな波がありました。
Tさんの職場では、業務上の成果を上げて歩合給の金額を高めるために、顧客に対してお祝いの花や茶菓子などを贈ったり、必要に応じて飲食費を負担したりなど、一定程度の接待行為を自らの負担において行うという慣行があり、Tさんも周囲の社員と同様、それらの費用を支出していました。
多い時は接待交際費だけで月に10万円前後かかっていたものの、成果に応じて給料も高くなるから問題はないと考え、接待交際費の支出を続けてしまいました。
しかし、上述したようにTさんの収入には波があることから、月によっては接待交際費を含めた支出が収入を上回ってしまうこともあり、その場合はクレジットカードのリボ払いを利用したり、消費者金融からの借入を行ったりしていました。
そうした生活を続けた結果、借金がどんどん膨らんでしまい、収入が少ない月はさらなる借入をせざるを得ず、収入が多い月も給与のほとんどを返済に充てなければならなくなり、生活が回らなくなってしまったのです。
Tさんは、毎月10万円以上の返済に追われつつ、返しても返しても借金がなくならない状況に限界を感じ、このままでは自宅を手放すことになってしまうと考え、当事務所の破産再生部に所属する弁護士に相談することにしました。
利息免除・借金減額
個人再生 1000万円→200万円(分割返済3年)
弁護士は、Tさんからの依頼を受け、債権者に対して直ちに受任通知を送付し、返済をストップさせました。
他方で、住宅ローンについては、支払いをやめてしまうと抵当権を実行され、自宅を失ってしまう可能性もあることから、住宅ローンの支払いは継続して行うこととしました。
今回は、「自宅を守る」というTさんの強い希望がありましたので、住宅ローンだけは返済を続け、それ以外の借入を減額する手続きである「住宅資金特別条項付小規模個人再生」の申立てを行うこととしました。
個人再生の申立てを行い、裁判所に自宅を残しつつ借金の減額を認めてもらうためには、住宅ローンを支払いつつ、減額した残りの借金についても3年〜5年で完済できるだけの安定した収入があるかどうかが重要なポイントとなります。
今回のケースでは、Tさんの収入にかなり大きな波があり、収入が少ない月だと生活費をまかなうことで手一杯になってしまい、借金の返済が可能なほどの安定した収入があるといえるかどうか微妙なケースでした。
ですが、Tさんの場合、確かに月ごとで見れば収入には幅があったものの、年間を通じてみれば十分な収入があり、収入の多い月にお金を使いすぎることを避けて貯蓄に回しておき、収入が少ない月には貯蓄から必要な分を補填するなど、やりくり次第で毎月の返済資金を捻出することは十分に可能であるといえる状況でした。
また、弁護士に依頼をしてから、Tさんは家族の協力を得て、家計表をつけるなどして日々の支出の中からカットできるところを探して生活費を切り詰めることにより、普段の支出を極力抑えることができていました。
また、奥様もお仕事を続けて安定した収入を得ており、そのほとんどを家計に充当してくださっていたため、今後は生活費に困る可能性は低いと考えられました。
これらの事情を裁判所に説明し、借金を減額することができれば、Tさんは住宅ローンを返して今の生活を守りつつ、生活を立て直すことができると主張しました。
最終的に、減額した借金を3年間で返済していくことが可能であると裁判所に認めていただき(再生計画の認可決定)、住宅ローンを抜きにしても1000万円あった借金は200万円にまで減額され、借金をおよそ5分の1にすることができました。
返済期間についても、200万円を一括で返すのではなく、3年間で返済していくことになり、毎月の返済額は従来の半額ほどにまで減少しました。
さらに、住宅ローンについても、引き続き支払いを継続していくことで、自宅を手放さずに済むこととなったのです。
このように、安定した収入に不安がある場合でも、場合によっては個人再生の認可決定を得られる可能性があります。
自宅を持ちながら借金に苦しんでいる方でも、自宅を処分せずに生活を立て直すことができる可能性はありますので、諦めずに債務整理に注力する弁護士にご相談ください。