Aさんは、シングルマザーとして働きながら長年にわたって子育てを行ってきました。
Aさんのお子さんは既に成人していたものの、精神的な不調もあって働くことが難しい状況であり、生活費は全てAさんの収入により賄っていましたが、生活は苦しく、日々の生活費の一部をリボ払いで支払うなどしていました。
そんな折、新型コロナウイルスの蔓延により、職を失いこそしなかったものの、収入が下がってしまい、生活費を賄うことが難しくなってしまいました。
生活費がかさむ一方であったことから、Aさんはやむを得ず、消費者金融からお金を借りて生活費の不足分を補填するようになりました。
こうした生活が続いた結果、いつしかリボ払いの残高を含めた借り入れは約400万円まで膨れ上がってしまい、毎月の収入のほとんどが返済に消え、足りない生活費をまた借り入れで賄うという悪循環に陥ってしまっていました。
Aさんは、このような状況に疲弊し、返済に追われる生活から抜け出したいと考え、当事務所の借金問題を扱う弁護士に相談されました。
Aさんの手取りの収入を考えると、借金を帳消しにする自己破産や、借金を大幅に圧縮できる個人再生などといった、裁判所を絡めての債務整理も視野に入ってくる状況でした。
ですが、Aさんは実家の不動産を相続により取得しており、当該不動産には親戚が無償で住んでいました。
その親戚は高齢であり、実家の不動産を失うことになると親戚の住む家がなくなってしまい、親戚を路頭に迷わせてしまうことも懸念される状況でした。
Aさんとしては、親戚に迷惑をかけることだけはなんとしても避けたいとの考えを持っていました。
そのため、弁護士はAさんとの協議の結果、親戚への影響がないように借金を整理したいというAさんの想いを最大限尊重し、任意整理を行って毎月の返済の負担を減らすことを選択しました。
弁護士は、直ちに債権者に受任通知を送付し、毎月の返済を一度ストップさせました。
そして、引直し計算を行った上、返済額の調整を行いました。
過払金などは発生していなかったものの、弁護士の介入により、最終的に毎月の返済額は6万円程度となり、弁護士に依頼する前と比べて10万円以上減額することができました。
また、将来利息もカットすることができ、任意整理をしなかった場合と比べて、トータルの返済額を大幅に減らすことにも成功しました。
今回の事案では、自己破産でも個人再生でもなく、任意整理を選択したことがポイントであるといえるでしょう。
Aさんの場合、収入に対する借入の総額が多額であったこと、借り入れの理由がもっぱら生活費の補填のためであってギャンブル等は一切していなかったことから、一般論としては自己破産を選択し、借金をゼロにすることもできたと考えられます。
しかし、自己破産を選択した場合、借金を帳消しにすることはできたかもしれませんが、それと引き換えに相続で取得した実家の不動産を失うことになり、親族に多大な迷惑がかかっていた可能性がありました。
また、住宅ローンの支払いを継続する代わりにそれ以外の借金を圧縮し、自宅を守ることができる「小規模個人再生」という選択肢も想定されます。
Aさんの場合、正社員として勤務しておりある程度安定した収入があったことから、こちらも借金の圧縮自体は可能だったと考えられます。
ですが、今回は相続によって取得した不動産であって住宅ローンなどは一切残っておらず、そもそもAさん自身が住んでいる不動産ではなかったため、個人再生の手続を使用した場合でも不動産を守るという目的は達成しにくい状況でした。
以上の状況を踏まえ、今回はAさんの希望を叶えるために、あえて任意整理を選択することとしました。
もちろん、Aさんがわざわざ親族の住居を確保する必要はなかったかもしれませんが、Aさんにとっては実家とそこに住む親族を守ることが重要だったのです。
任意整理は、一般的には自己破産や個人再生とは異なり、過払金の存在が明らかになるなどしない限り、借金の大幅な減額にはつながらないケースもしばしばあります。
ですが、今回のように相続した不動産を失いたくない場合や、自動車を手元に残しておきたい場合などにおいては、整理する業者を選ぶことができ、柔軟な解決を図ることができる任意整理が適切な場合もあります。
他にも、裁判所を介する必要がないため、誰にも知られることなく比較的早期に解決ができる可能性があることや、自己破産や個人再生と比べて弁護士費用を抑えられること、返済の負担を減らすことができることなど、任意整理を選択するメリットは多々存在します。
任意整理について、詳しくはこちらをご覧ください。
また、自己破産や個人再生について、詳しくはこちらをご覧ください。
借金に苦しむ方々は大勢いらっしゃいますが、その背景にはさまざまな事情があり、それぞれのご状況に応じた手続きを選択する必要があります。
どの手続きを選択すべきかについては、手続きごとのメリット・デメリットを踏まえた専門的な判断が必要となりますが、返済に追われる状況では冷静な判断は難しいかもしれません。
借金問題でお悩みの方は、ぜひお早めに当事務所にご相談ください。