サポート無 | サポート有 | |
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早期釈放 | 勾留決定が出てしまい、最大20日間にわたって勾留される | 勾留決定が出ても裁判所への準抗告により、数日で釈放 |
示談 | 被害者と連絡を取ることができないため、不可能 | 弁護士を通じて示談交渉を行い、示談成立 |
処分結果 | 略式命令による罰金刑 | 不起訴 |
その後の生活 | 前科がついてしまうと懲戒処分の対象となり、退職もありうる | 懲戒処分を回避し、従来どおりの生活に戻ることができた |
Wさんは、ある日の仕事終わり、行きつけの居酒屋でお酒を飲んでいました。
飲み足りないと思ったWさんは、その後2軒目、3軒目と行きつけの店を周り、かなりの量のお酒を飲んでしまいました。
それでも、なんとか一人で歩いて帰ることができるくらいの状態だったため、Wさんは会計を済ませ、一人で繁華街の中を歩いて帰っていました。
Wさんは相当お酒が回っていたため、記憶は曖昧でしたが、その際、Wさんの手がすれ違った女性のお尻に触れたとのことで、Wさんは後日警察に呼ばれ、事情を聞かれることになりました。
Wさんは意図的に女性の体を触ったという認識がなかったため、「全く身に覚えがない」と回答していましたが、その事情聴取を受けてから約1ヶ月後、Wさんの自宅に突然警察がやってきて、Wさんは福岡県迷惑行為防止条例違反(痴漢)の疑いで通常逮捕され、その後勾留されることが決まってしまいました。
突然のことで動転したご家族の方から相談を受け、当事務所の刑事事件を専門的に扱う弁護士が対応することとなりました。
Wさんは、身に覚えのないことで逮捕されてしまったことにショックを受けていました。
Wさんの認識によれば、確かに当時は酒に酔っていたものの、記憶が完全に飛んでしまうほど酔っていたわけではないし、わざと体を触ったことは断じてないとのことでした。
可能性があるとすれば、「酔って大手を振って歩いていた際、たまたま手がすれ違いざまに当たってしまったかもしれない」といった程度だったようです。
Wさんは奥様と結婚してから1年も経っておらず、奥様を非常に大切にされており、「将来的には子どもが欲しい」といった話をしていたところでした。
そのような中、警察に逮捕されたことで、「自分のせいで妻に心配をかけてしまい申し訳ない」と涙を流しておられました。
当事務所の弁護士は、自身の認識と異なる内容の供述調書を作成されることがないよう、取調べの際には黙秘するよう勧めました。
一方で、Wさんの職業柄、勾留期間が長期にわたった場合、失職のリスクが高いことも考慮に入れ、相手方女性との関係で、示談交渉を行うことも視野に入れる必要があると考えました。
そこで、「わざと触ったわけではないが、もし手が体に当たってしまい不快な思いをさせてしまっていたのであれば大変申し訳ない」という本人の認識をお伝えし、示談交渉も並行して行うことにしたのです。
当事務所の弁護士は、すぐに捜査機関に連絡を取り、被害者の連絡先を教えていただきました。
そして、その日のうちに被害者に連絡し、上述したWさんの認識をそのままお伝えし、謝罪しました。
被害者の女性は、Wさんの認識についての説明を受け入れてくださり、迷惑をかけてしまったことへの謝罪という前提で示談に応じてくださることとなりました。
弁護士は、示談成立の事実を大急ぎで書面にまとめ、裁判所に対し、勾留決定を取り消してWさんをすぐに釈放するよう求める「準抗告」を申し立てました。
その結果、準抗告が認容され、Wさんは勾留されてから数日で解放されました。
ほどなくして、担当検察官から、本件については不起訴とする旨の連絡があり、Wさんは前科をつけずに済みました。
さらに、弁護士はWさんの職場に対しても、今回の件は無事に不起訴処分になったこと、示談こそしたものの意図的に体を触ったことを認めたわけではないこと、女性もそれを理解した上で許してくださったことを報告し、職場内での処分を行わないよう求める意見書を提出しました。
結果的に、Wさんは職場でも何らの処分も受けずに済み、無事に元の生活を取り戻すことができました。
今回のポイントの一つは、女性の体を意図的に触ったことを認めない、いわゆる否認事件ではありましたが、他方で被害者との示談交渉を行うことを選択した点です。
もちろん、否認事件である以上、取調べについては黙秘を選択し、無実の罪を認めることにならないよう全力でサポートすることが最重要になりますが、一般的には否認事件の場合、勾留期間が長引き、長期間帰宅できなかったり、職場に出勤できず逮捕の事実が発覚してしまったりするケースが多いといえます。
今回はWさんの職業上、身体拘束が長期化することは是が非でも回避したいという状況でした。
そのため、早期に勾留を解除し、一刻も早く帰宅できるようにするため、否認事件であっても示談交渉を行うこととしました。
「意図的に体を触ったわけではないが、酒に酔って歩いていた際、すれ違いざまに手が女性の体に当たってしまった」という前提での示談交渉を行い、無事に示談を成立させることができたのです。
このように、事案の内容に応じて柔軟に対応したことが、早期釈放につながったといえます。
もう一つ、「不起訴処分を得られた」だけで終わらせず、職場へのアフターケアを行なった点も重要なポイントといえます。
一般の方々からは、警察に逮捕されてしまった時点で「悪いことをしたのだろう」という偏見を持たれてしまうケースは少なくありません。
そういった方々に、「不起訴処分になった」という事実を伝えたとしても、その意味を正確に理解してもらえないこともあります。
そうした誤解により不当な処分を受けることのないよう、職場に対して本人の認識を正確に伝え、不起訴処分の意味合いなどもご説明した上で、寛大な処分を求める意見書を作成し、Wさんの職場に提出しました。
これにより、Wさんの勤務先の担当者にも不起訴処分の意味合いを十分にご理解いただき、結果的にWさんは懲戒処分を受けずに済み、以前と変わらない条件で復職することができました。
筆者は、不起訴処分が出た時点で終わりではなく、ご依頼いただいた方が元の生活に一刻も早く戻ること、その後のダメージを最小限に抑えることも、刑事弁護の重要な要素であると考えています。
具体的には、上述したような職場への働きかけや、場合によっては不当な処分に対する抗議など、その内容は多岐にわたりますので、状況に応じた適切な策を検討する必要があります。
そのためには、日々刑事弁護に熱心に取り組み、研鑽を積んだ弁護士に依頼することが重要です。
刑事事件でお困りの際は、ぜひ当事務所の刑事事件部に所属する弁護士にご相談ください。