Sさんは若い頃から定期的に痴漢や盗撮といった性犯罪を繰り返しており、数年前には執行猶予付きの判決を受けたこともありました。
執行猶予の判決を受けてからは真面目に暮らしていたSさんですが、単身赴任が決まり、一人で生活していく中で仕事などの様々なストレスを抱え込んでいきます。
ある日ストレスが限界を迎えてしまい、欲求が抑えられなくなってしまったSさんは再び痴漢に及んでしまいました。
Sさんは目撃者から取り押さえられ、その後警察に引き渡されて逮捕・勾留と身体拘束の手続きが進んでしまうことになりました。
警察からの連絡で事件を知った遠方のご家族は、なんとか実刑を避けることが出来ないかと当事務所に相談にいらっしゃいました。
当事務所の弁護士がご家族からこれまでの前科前歴を聞いた限りでは、示談などの有利な事情を示せなかった場合、今回は実刑となってしまう可能性もあるとの印象を受けました。
同時に、弁護活動の結果次第では処罰の内容を罰金刑まで落とすことができる可能性があると感じたため、起訴前弁護活動の依頼を受けることとなりました。
接見で本人と話をしたところ、刑罰はもちろん、事件が会社に発覚することも恐れている様子でした。
幸い事件の報道はされていませんでしたから、長期間の身体拘束さえ避ければ会社にはなんとか言い訳がきくという状況でした。
そこで、まずは一刻も早く身体拘束を解放することを目指し、身体拘束に対して裁判所に異議を申し立てることとしました。
裁判所にこちらの主張を認めてもらうためには、最低限Sさんの身元引受をしてくれる人物が必要でしたが、ご家族は遠方にお住いでしたから、他に誰か適任の人物を見つける必要がありました。
Sさんに誰か心当たりはないかと聞いたところ、家族とも親交のある同僚が1名いるとのことでしたので、同僚の方に事情を話して身元引受人になってもらうようお願いすることとなりました。
同僚の方の協力のもと、Sさんが証拠を隠そうとしたり、逃亡したりすることがおよそ不可能な状況を作った上で身体拘束を解放するための申し立てを行いました。
また、申し立てと同時に裁判官に面談の申し入れも行い、直接事情を説明できるように手配しました(翌日、電話での説明が許されました)。
その結果、申し立ては無事に認められ、Sさんは会社に事件がバレることなく日常生活に戻ることができました。
Sさんが釈放された後に被害者の方との示談交渉を行い、無事に被害者の方には許してもらうことができましたが、それでもSさんの前科前歴を考えると、検察官が懲役刑を求めてくる可能性はまだ否定できません。
そこで、再犯防止のための治療に取り組んでもらいつつ、同僚にも可能な限り今後の生活を監督してもらうことを約束してもらうなど、可能な限り有利な事情を積み重ねて検察官に罰金刑に止めるようお願いをしました。
このようにあらゆる手を尽くした結果、高額な金額とはなりましたが、なんとか略式手続による罰金刑という処分で事件を終えることができました。
Sさんは、同じような事件を繰り返してきていたため、最悪の場合には実刑となる見込みがありました。
実刑がありうる事件の場合、裁判所はなかなか被疑者を釈放しようとしません。
実際にSさんの事件で異議を申し立てたあと、弊所の弁護士が裁判官に説得を試みた際もかなり難色を示していました。
裁判所の思考としては、実刑になるかもしれない事件では、その恐怖から被害者への働きかけなどの証拠隠滅や、生活を捨てての逃亡といった行動に出るかもしれないと考えているからです。
もちろん普通の方は家族や生活を捨てて逃亡するなど考えるはずもありませんし、被害者と顔見知りでなければ働きかけも行いようがありません。
現状の運用は勾留の要件を緩やかに解釈しようとするものであり、刑事司法のあり方としてはふさわしくないと思います。
ただ、裁判所の思考はそう簡単に変わりません。
そうである以上、実刑がありうる事件で早期釈放を目指す場合には、裁判所が釈放を渋る理由となりそうな事情を予め潰してしまう工夫が必要になります。
どのような工夫をすれば釈放に繋がるかはそれぞれの事例によって異なりますが、打てる手を全て打ってみるということが早期釈放を目指す際のポイントになると考えています。
釈放のための活動について、詳しくはこちらもご覧ください。
犯行を認めているような事件では、不起訴や軽い処分を求めて検察官と折衝を行うことがあります。
被害者との示談や再犯防止への取り組みを示す資料など、有利な情状を示す証拠を提出することはもちろんですが、弊所では刑事事件に注力していることを活かし、類似事例の処分例を示すなどして検察官の説得を試みることもあります。
最終的な処分の決定権限は検察官にありますし、類似事例と事情が異なる部分もありますから、必ず類似事例と同じような処分に導けるわけではありません。
しかし、検察官が軽い処分を下すかどうかを悩んでいる場合、その判断の参考にしてもらえるような情報を提供することができれば、検察官の判断を後押しできるのではないかと考えています。
痴漢事件についてはこちらもご覧ください。
刑事事件でお困りの方は、刑事事件に注力する弁護士が複数在籍する当事務所に、ぜひご相談ください。